公共建築物木材利用促進法

公共建築木材利用促進法とは

世界レベルにおける地球温暖化対策が急務とされる中、わが国日本でもこの問題に積極的な対処をするために、平成20年9月、国連会議の席で鳩山内閣総理大臣が「温室効果ガスの排出量を2020年までに25%削減することを目指す」ことを表明しました。 これにより、わが国日本は温室効果ガスの排出規制だけではなく、温室効果ガスを吸収し長期的にストックできる循環型の木材資源にウェイトが置かれ、バイオマスエネルギーの導入や、林業再生プランにまで積極的に取り組む事となりました。

戦後から植林されてきた人工林(杉、ヒノキ)は有効利用できる時期を迎える一方で、国内における建築の木造率が低い現状の中で、国は「10年後の木材自給率50%以上」という目標の掲げ、今後の需要が期待できる公共建築物も国が率先して木材利用に取り組み、地方公共団体や民間事業者にも国の方針に即して主体的な取組を促し、住宅など一般建築物への波及効果を含めた方針として『公共建築木材利用促進法』が22年10月より施行される事となりました。

「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」林野庁
公共建築物等における木材利用の促進スキーム

公共建築木材利用促進法による社会的影響と効果は

今後、この法律によって、国や地方公共団体が計画する平屋から3階建てまでの中規模建築物は、事実上、木造化が義務付けられます。
例えば3階建ての学校施設、保育園、集会所、市役所、等々、建物の構造部分は基より内装部分にいたるまでを積極的に木質で建てる事になり、効果としては年間500万m2の公共建築物が「木造化」の対象になるとも言われています。

また、消費の現場だけではなく、水上となる山林の維持管理から製材に至までの流通過程にまで、国が率先して整備を行い、価格面でも海外のからの材木に依存しなくてもよい仕組み作りにも取り組み、地方における新たな雇用の創出も役立てています。

公共建築木材利用促進法による建設業界の影響と安全面での取り組み

長引く景気の低迷と少子高齢化が重なり、公共の仕事も一般の住宅需要も減り続ける中で、この法律は木造を専門としてきた建築業界にとっては、とても大きな市場の発生と新たなビジネスモデルの可能性を秘めています。

本来、公共建築と言えば、大小ゼネンコンによる受注が大半を占めていましたが、これら企業には元々木造に対するノウハウがほとんどない上に、RCやS造とは違い、木造特有の詳細かつデリケートな分野は組織的にも得意ではなく、木造が得意な施工業者に請け負わせるか、ジョイントベンチャー的な受注をせざるを得ない状況です。

まして、この法律に伴う建物はたとえ平屋であろうとも不特定多数の人が使用するため、規模にかかわらず、許容応力度計算による構造の安全確認を義務付ける事も議論されており、今後、設計段階からの提案となれば、手離れの良いS造の構造計算とは違い、比較にならないほど複雑な木造構造計算と言うリスクが付きまとうため、安易に木造での提案も出来ないのが現状です。

それだけに、普段から木造に関わってきた建設業者にとっては、大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。

公共建築木材利用促進法の施行に伴うNK工法の役割と効果

弊社のNK工法では、設立当初から大空間や大スパンを得意とする金物工法と集成材の専門プレカットに加え、社内規定により全物件許容応力度計算による構造チェックを導入し、常日頃から木質構造の安全性と強度の限界について取り組んでいたおかげで、今回の法整備以前から、数々の大型公共建築物を手がけていました。

しかも、許容応力度計算には安全性を確かめるだけではなく、副産物として過剰設計を未然に防ぎ構造材をシェイプアップさせる機能も持っています。

その結果、建築物の構造コストがS造と比較すると大幅にダウンする事も確認され、木質化を推奨することで資金面での効果も高いことが判明しています。

公共建築木材利用促進法による二次的なコストダウンの効果

これまでの公共建築物が、積極的にRCや鉄骨造を進めてきたのに対し、今後、木造化が進めば、まず建物全体の重量が軽減され、それに伴い基礎構造部分のボリュームそのものが減少し基礎構造部分でもコストダウンが実現します。

また、基礎構造の軽減により基礎の根入れの深さも浅くなり、地業工事に伴う残土排出量も少なくなるだけでなく、埋蔵文化財の影響を受けやすい地域では、多額の費用がかさむ試掘を免れる効果も出てきます。

実際に弊社の担当した保育園施設では木質構造部分だけが、試掘を免れ、推定で一千万相当の試掘経費を削減できたケースもございます。

公共建築木材利用促進法に伴う安全確認(構造計算)のリスク

本来木造では建てられるはずもなかった大空間の建造物が、この法律と、ここ数年で飛躍的に発展した木造金物工法の技術によって実現する事にはなりましたが、現在の建築基準法による安全性の確認は、まだまだあいまいな所も多く、安易な木造化は多くの人命にも関わる重要な問題です。

まして、鉄骨やRCの構造と違い木質の構造計算は複雑かつデリケートで、その構造にともなう許容応力度計算には膨大な時間と労量が要求されると同時に、姉歯元一級建築士の事件一以来、この構造計算に対するチェック機能の厳格化と、要求される膨大な資料の多さは、一級建築士の人件費で換算すると採算の取れない業務となってしまい、コンペ絡みの設計提案では、事業主が木質での提案を希望していても、契約出来る確約もない設計提案対しては、あえて木質での提案を避ける傾向にもあります。

構造計算に伴う慢性的な人手不足の問題がこの法律により加速し、安全面が犠牲なることだけは避けなければなりません。

構造計算が抱える問題点と弊社NK工法の社会的な役割

許容応力度計算はご承知の通り、木造では3階建又は述床500u以上からの建物の申請に義務付けられており、現在では充実した構造計算ソフトも出回っています。しかしながらこの構造計算ソフト自体も、全ての安全を100%カバー出来る物でもなく、最終的には構造計算担当者の判断に委ねられる部分もあり、100人いれば100通りの計算結果が存在すると言われています。それだけに許容応力度構造計算そのものも、長年の経験がものを言う奥の深い世界です。

しかも、この許容応力度計算は膨大な人手を必要とする作業ですので、過去に弊社でも構造計算に伴う人手不足で危機的な状況に陥った時期もございます。現在ではその人手不足を海外(ベトナム事務所)で補う事が出来るようになり年間800棟の構造計算をこなすまでになりました。
弊社の系列会社(ジョインウッド)である構造計算専門の設計事務所がこの業務を担当し、平成22年以降からは、国土交通省所管する全国中建築工事団体連合会(全建連、JBNサポートセンター)の指定設計事務所として、長期優良住宅から大型施設の構造計算のサポートも行い、弊社業務だけにとどまらず、構造計算を通して広く社会に貢献できる体制を整えています。

利用者から見た公共建築木材利用促進法の効果

木質構造になれば建物全体の調湿効果が改善され、空気環境や視覚的環境にもたらす効果が期待できます。保育園であれば園児たちが成長期の大切な時期を木質の自然の香りがする建物の中で、また、高齢者施設であれば人生の後半を悠々自適に木調の雰囲気の中ですごすことを、どうか想像してみてください。これまで建ててきた、コンクリート調の建物の中ですごすこととどちらが良いのか?高度経済成長期には鉄骨やRCがデザイン的にも斬新でもてはやされた時代がありましたが、今は、利用者の心理的なニーズも大きく変わってきたと言えるでしょう。

あとがき

すこし私自身の話になりますが、昨年、担当させて頂いた保育園で、理事の方と保護者代表の方々数名を別の保育園の工事現場にご案内させて頂いたときの事です。 中のお一人が私にこう言いました。

『私たちの保育園も本当に木造で建てることが出来るのでしょうか?現在の計画では保育園を鉄骨で建てる計画になっているのですが、保育園ですごす園児たちのためにも、なんとか木造でお願いすることができますか?』

と切実に訴えてこられるその言葉に、胸が熱くなるのをこらえながら、私は一言『大丈夫ですよ』と答えました。

あれから2年が過ぎ、完成した幼稚園を時々訪問し元気に走り回る園児の姿を眺め、当時の事を思い出しながら、木造と言う仕事に関われた事に、喜びと感謝の気持ちをかみ締めています。 また、私たちが作る骨組みは、普段、直接的に消費者の目ふれる事のない仕事ですが、見えない部分での仕事だからこそ、人命に関わる安全性に責任を持って取り組んで行きたいと思っております。

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